電子工作入門::トランジスタの使い方
定番中の定番の電子部品です.中学校の技術科で使った三本足の部品を覚えている人も多いのではないでしょうか.
種類とか
トランジスタには大きく分けて,PNP型とNPN型の2種類があります.この2つは回路図上でも微妙に記号が異なっています.さらに,型番で高周波用と低周波用の2種類が区別できます.
型番 | 種類 | 用途 |
---|---|---|
2SA*** | PNPトランジスタ | 高周波用 |
2SA*** | PNPトランジスタ | 低周波用 |
2SC*** | NPNトランジスタ | 高周波用 |
2SD*** | NPNトランジスタ | 低周波用 |
他に,電流ではなくて電圧で動作するFETなどもあります.そちらの説明は次の機会に.
良く使うのは,NPNの 2SC1815 と PNPの 2SA1015 ですね.
部品上の表記
普通は,最初の2Sを省略して,「C1815 GR」などと書かれています.「GR」というのは,増幅率を表していますが,表記はメーカによって若干違います.
良く使う東芝の1815の場合,増幅率(hFE)は,以下のようになっています.
- O: hFE = 70~140
- Y: hFE = 120~240
- GR: hFE = 200~400
- BL: hFE = 350~700
数値を見ると分かりますが,トランジスタの増幅率にはかなりバラつきがあります.これは,増幅率を正確に決めて作るのは技術的に難しいからです.増幅率を細かく調整したい場合は,可変抵抗などを使って回路を動かしながら調整するのが一般的です.
現在の技術ならば目的の増幅率のトランジスタを作ることができますが,普通に売られているのは大雑把に表記されたものです.ただ,同じ生産ラインで同じ時期に作ったものの特性はかなり一致するので,一つの回路で使うトランジスタは一度に買う方が良いでしょう.
使い方
基本的な使い方については,中学校の技術科の教科書でも参考にしてください.
トランジスタには,3本の足が出ています.文字が書いてある面をこちらに向けたときに,左から,エミッタ,コレクタ,ベースと呼ばれる端子です.基本的に,ベースを流れる電流を増幅したものが,エミッタに流れる電流になります.
NPN型
NPN型トランジスタは,ベースからエミッタに向けて流れ込む電流を増幅します.ベースから電流を流し込むと,コレクタからエミッタへ電流が流れるようになります.
PNP型
PNP型トランジスタは,NPN型とは逆にベースから流れ出る電流を増幅します.つまり,ベースの電位を下げるとエミッタからコレクタへ電流が流れることになります.
使い分け
トランジスタを単純な増幅回路やスイッチング回路に使う場合,エミッタ,コレクタ,ベースのうち一本の電位を固定して使います.そうしないと,基準となる電圧が無いことになるので,入力信号を決めるのが難しくなります.
電位を固定する場所によって,「エミッタ接地」「コレクタ接地」「ベース接地」などと言います.ベース接地は,オーディオアンプなどの回路で見かけます.
入力信号でスイッチングしたいなら,エミッタ接地が一般的です.トランジスタのON/OFFの状態は,ベースとエミッタ間に流れる電流で決まるので,入力をベースに入れる場合,エミッタの電位が決まっていると楽だからです.スイッチング速度等を考える場合はまた変わってきますが.
つまり,エミッタが電源か,グランドに繋がっている必要があるので,回路の電源側で制御したいならPNP,グランド側で制御するならNPNと思っておけばよいでしょう.PNPを使った場合,出力される信号は反転されます.
回路例
トランジスタをON/OFFのためのスイッチとして使う場合は簡単な回路で出来ます.
電流が流れる方向によって,PNPとNPNを使い分けます.トランジスタ側に,電流を取り出したい場合はPNP,電流を流し込みたい場合はNPNです.
出力は反転されているので注意.
歴史
トランジスタの歴史は,今(2005年)から遡ること,58年前のべル研究所で始まりました.ベル研のバーデーン(John Bardeen)とブラッテン(Walter H. Brattain)によって作られた点接触型トランジスタというものが最初のトランジスタです.ただ,このトランジスタは不安定であまり広くは使われませんでした.4年後の1951年,同じくベル研のショックレー(William Bradford Shockley)によって,接合型トランジスタが作られました.これは,現在使われているトランジスタと同じ,PNP型やNPN型のトランジスタです.
おまけ
あなたは,いったいいくつのトランジスタを使って生活していますか?10個ですか?100個ですか?1000個ですか?そんなに少ないはずはありません.例えば,あなたが携帯電話を使っているなら,それだけで数千万個のトランジスタのお世話になっていることになります.パソコンを使っているなら,少なくとも数億~数十億個のトランジスタを使っています.その全てが正確に動作することで,便利な道具が使えているわけです.
この文書の履歴
- 2005-07-08 某所で公開
- 2006-10-05 使い分けについてを追加