電子工作入門::半田付け
ハンダ付けは,電子工作に限らず金属同士を簡単に接合できる技術です.今回は電子工作向けのハンダ付けのための道具と,ハンダ付けの仕方を説明します.難しくはありませんが,大切な部分なのでしっかり身に付けるようにしてください.
「ハンダ」,「半田」,「はんだ」等,色々な表記がありますが同じものです.
道具
まずは,ハンダ付けのための道具をそろえましょう.大き目のホームセンターに行けば買えると思います.
- ハンダごて(必須)
- ハンダ(必須)
- 半田ごて台
- 半田吸い取り線
- 半田吸い取り器
半田ごて
ハンダごては20W~30W位のもので,こて先が細いものが使いやすいと思います.汚れたときは,使うときに暖めてから,濡れた布で拭けば綺麗になります.電子工作用のハンダごてのコテ先はコーティングされているので,鑢で削ったりしてはいけません.
最初は安いものでいいでしょう.ニクロム線半田ごては1000円以下で売っているので手ごろです.セラミック半田ごては,ニクロム線ハンダごての2倍くらいの値段ですが,温まり方が速いので便利です.
半田ごて台
半田ごて台も必用です.灰皿とかでもいいですが……専用の台を用意しておいた方がいいでしょう.
こて先を拭くスポンジが付いているものが便利です.あと,カバンの中に常に半田ごてが入っている人は,左側にあるような小さい簡易のこて台も持っておくと便利でしょう.
半田(はんだ)
色々な種類のものがありますが,スズが60%くらいのものを使ってください.太さも色々ありますが,1mm前後のものを使うといいでしょう.電子工作用のヤニ入りハンダを使えばまず大丈夫です.
ここからは読み飛ばしても構いません.
普通の半田の融点は低いもので184℃です.半田は錫(Sn)と鉛(Pb)の合金です.Snの融点は232℃,Pbは327℃です.合金はもとの金属より融点が低いことがあります.このとき,金属は共晶とよばれる結晶構造を持っています.なかには100℃以下で融解する合金も存在します.
で,最近問題になっているのが鉛です.最近は,鉛をなるべく使わないようにするという方向に進んでいっているので,半田にも鉛を使えないことがあります.そういうときには,銀などが入った半田を使うのですが,融点も値段も高いので,半田付けをする人にとってはあまり嬉しくないことですね.
半田付けの仕方
あたりまえですが,半田ごてがよく温まるまで待ちます.試しにハンダをコテ先につけて溶けるか確かめてください.
絵で,半田ごてが左から出ているのは,何も考えずに描いてしまったのと,私が普段は左手で持っているからです.持ちやすい方の手で持ちましょう.
- まず,基盤の穴に部品を通し,抜け落ちてしまわない程度に足を曲げておきます.
- 基盤のパターン(図では赤)と部品の足に半田ごてのコテ先を当てて,暖めます.
- そこへハンダを入れて溶かします.
- ハンダを流し込んだら,先にハンダを離します.
- ハンダが上手く付いていることを確認してコテ先を離します.
- 他の足も付けたら,最後に余分な部分をニッパで切り落として終わりです.
半田ごてを対象に当てた後に,ハンダを流しいれる感じでやるのがスムーズに作業するためのコツです.2~4の工程をいかにリズム良くできるかで,ハンダ付けの上手さがきまります.
足をニッパで切り落とすときは,何も考えずに切ると,切り落としたものが飛んでいって危険です.また,パソコンのキーボードの隙間などに入って嫌な思いをするかもしれません.あいている指で押さえましょう.
銅線をハンダ付けする
銅線を基板にハンダ付けする場合は,まず銅線にハンダを少量付けてから,基板に通してハンダ付けすると上手くいきます.スズめっきされている線はそのままで問題ありません.
基板から銅線がそのまま生えていると,線を何度も動かしているうちに切れてしまうので,一度,穴に通したりして動かないようにしましょう.
- 被覆を向いた銅線に少量のハンダをつける
- 基板に通す
- 普通の部品と同じ要領でハンダ付け
注意とコツ(というほどでも無いかも)
部品の半田付けは,背の低いものからやっていきましょう.先に背の高い部品をつけてしまうと,背の低い部品がつけづらくなります.ただ,熱に弱い部品(ICなど)は後回しの方がいいと思います.
一度使って足を切ってしまって短くなってしまった部品は基盤にさした後,テープで固定すると楽です.指で抑えてやってもいいですが…熱いです.
ICやトランジスタなども,すぐ壊れるわけではありません.学校の技術科で勉強するとなぜか先生が「熱に弱いから細心の注意をする」なんて脅してきますが,普通に手際よく半田付けすれば問題ありません.あまり,慎重にやりすぎると半田が上手く付いていなくてやり直す羽目になりかもしれません(体験談).
切り落とした部品の足はとっておいた方が良いでしょう.後で色々使えます.ただ,その辺に散らばっていると怪我をしたりするので片付けましょう(^^;
半田の外し方
間違ってハンダ付けしてしまったときや,部品が壊れてしまった場合,もしくは他の基盤から部品を外して使いたい場合等,一度ハンダ付けした部品を外さなければならないことがあります.半田付けされているものを外すには,半田吸い取り線や半田吸い取り器が便利です.用意しておいた方がいいでしょう.
はんだ吸取線
はんだ吸い取り線は,細い銅の繊維をひも状に編んだものです.はんだ付け面に吸取り線を載せ,上から半田ごてを押し当てると,融けたハンダが吸い取られます.
はんだ吸い取り器
はんだ吸い取り線では,大変なときは,はんだ吸い取り器が便利です.半田ごてでハンダを溶かしながら,ハンダ吸い取り器で吸い取ります.あまり綺麗に取れなかった場合には,残りをはんだ吸い取り線で綺麗にしましょう.
部品の換装
部品を付け替える場合は,一旦,古いハンダを綺麗に除去するようにしましょう.古い半田はヤニ入りハンダのヤニが蒸発してしまっているので,綺麗なハンダ付けにならないことが多いです.
おまけ
以下は,おまけです.
スルーホール
基盤には両面にパターンがあるものや,2重,3重になっているものがあります.回路が複雑になると,1つの平面に全ての配線を作れないためです.この基盤は部品の足や,基盤にあけられた穴で各層のパターンが繋がっています.思わぬところで繋がっているので回路を調べるのも一苦労です.
そして,もうひとつ問題なのが,一度半田付けされた部品を外すのが大変なことです.普通の基盤はパターンが表面だけなのですが,スルーホールという基盤は,穴の側面も銅で覆われています.なので,半田を溶かすのが大変なのです.はじめのうちは気をつけたほうが良いかもしれません.
表面実装
最近は,フラットパッケージのICなど,表面実装部品を使わなければならないことも増えてきました.量産ラインではハンダ槽等を使うのが普通ですが,個人ではんだ付けする場合はそんなことはできません.
基板にはんだを載せてから,上に部品を載せて,半田ごてで足を押さえつけるように半田付けすると楽です.半田が多すぎた部分は,後から吸い取り線で調節します.他にも色々な工夫の仕方があると思います.
この文書の履歴
- 2001-07-18 第一書庫にて公開
- 2006-05-29 校正.ロボ研用に書き直し